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中世の港と海賊/山内 譲

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20110730_03.jpg 「海賊」という言葉から、どのような人達を想像するだろうか。大海原を荒らし回って略奪を繰り返しお宝を…みたいなイメージがまず頭に浮かぶかもしれない。そのイメージは全て間違いではないが、実情とは異なっている。

 日本における「海賊」とは、単なる略奪集団ではなく、その海域を支配していた「領主」と言えるべき存在であった。
 とくに、中世瀬戸内海の海では、様々な海賊が、時には争いや略奪もあっただろうが、自分の領海を通航する船から金銭を得る代わりに、領海を出るまでの安全を保障したり、護衛に当たったりと、様々な役割をこなし、むしろ海の安全を守る側だったことも多かったようである。

 そんな中世の海賊達を、網野学的視点からまとめているのが本書。書き下ろしではなく、色々な場所で発表した文章をまとめた単行本ではあるが、記載されている主張は一貫したモノを感じて読みやすい。
 特に瀬戸内海沿いに馴染みのある人なら、その地形を思い出しながら、当時の海賊達がダイナミックに活躍した様を頭に描きながら読むのも面白いと思う。

 日本の歴史を作ってきたのは、単純な「支配者と農民」だけでなく、様々な役割を持った人たちが今の社会と同じように、様々な仕事に従事していた。そんな歴史の彩りを感じられる文章であり、面白かった。

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