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宮本常一公演選集1・民衆と文化史

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PA270272.JPG みんな大好き!みやもっちゃんの公演選集です。農文教から発刊されておりまして、以降は2ヶ月に1冊程度のペースで発刊される模様。

 私が彼の著書に魅力を感じる訳は、彼の学問には、過去を向いた研究室の学問ではなく、常に未来を見据える提言が含まれているからです。

 本書の中でも彼は「社会問題というのは1日で出来るものではなく、背景には歴史があり、その歴史を調べると人々が何を目指して生きてきたのがわかる、それを体系化したい」みたいな事が述べられています。

 民俗学者というと、よくわからんお寺や祭りを調べるだけの印象がありますが、彼の民俗学は、日本民衆の生き様をリアルに伝えると共に、彼自身、日本の農村を豊かにするため、農作物の栽培方法や文化を様々な土地に伝えたりしています。戦後の日本、宮本常一のおかげで新な土地で栽培を始めた農作物は結構多いのです。

 私自身「歴史学者や民俗学者は現代の社会問題や犯罪に対して積極的に発言すべき!」と思っていますが、彼のように集めた知識を正しく日本の未来に向けて活用しようとする歴史学者や民俗学者が少ないのは残念なことだなぁ…と思います。

 もう、一冊丸々引用しまくりたい程珠玉の言葉で溢れているのですが、その中でちょっと面白い部分を引用。

日本人ほど時なしにものを食べる民族はなかったのではないかと思います。定期的に三食を守って、それ以外にはものを食べないという欧米流の生活ではなくて、やたら食べ、そして日常の三回の食事の時にはあまりおかずは食べません。これが、いつ行っても喫茶店が賑わっているという文化を生み出してきたのではないでしょうか(中略)そのおかげで東京の飲食店は繁盛し…

 これだけを読むと「え?日本人ってそんなに間食多いかな」と思ったりもするのですが、それは私達が戦後、学校生活や会社勤めで時間に縛られた生活を送っているためであり、ここにたどり着くまでの圧倒的な彼の経験に基づく話を読むと、確かに日本の飲食店数はとても多く、時間に支配されない休日などは、あまり時間に関係なくお客入っているよなぁ…と考えたりするのです。

 そういえば、ミシュラン東京の編集に際し審査員の方達が、日本の飲食店数は、他の大都市に比べ桁違いに多いと発言していました(東京約16万、パリ約1.5万、NY約3万、らしい)。日本にいると意識しませんが、外国から見ると日本は飲食店が多く繁盛しているのは事実なのでしょう。これは、宮本常一が言うように、過去の日本の間食という風習が、現代の日本にも通じている例なのかもしれません。

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民衆の生活文化(宮本常一講演選集1)

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