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▼2008年02月06日

家康はなぜ江戸を選んだか/岡野友彦

 昔から漠然と思っていた事で、いわゆる「江戸城」は何故あんなに海に近いのか…という点がある。今でこそ晴海の辺りまで埋め立てられた東京湾だが、かつては「日比谷入江」という言葉があるくらい、江戸城は極めて海に近かった。この海への距離感は、京都や大阪、名古屋、あるいは仙台などと比べても明らかに海に近すぎるのではないか。家康が広義での「江戸」を選んだ事については、あまり疑問とも感じていなかった私だが、狭義の上での「江戸」を選んだ事については、何らかの明確な意志があると感じている。

 本書は秀吉によって江戸に左遷されたという一般論に意義を唱え、家康が江戸を選んだ理由について、主に当時の権力闘争、政治面などから考察している。

 ただ、本書を読んで感じた事は、経済面と技術面、地政学的な方向からの考察がやや不足しているような気もした。例えば経済面では、太平洋航路の発達と、東日本からの物流の増加からみた江戸の地勢。本書では利根川水系の水運にも触れているが、多分江戸時代における利根川水系の重要性は、私たちが思った以上に高く重要なものであったはずである。例えば北国からの荷物をわざわざ銚子で川船に乗せ替えて江戸に送る事が多かった理由は、当時の航海技術で房総半島を経由して江戸に至るルートの危険性が非常に高かったという背景もあるし、また、それらの危険性をシステムとして避ける理由が生じてきた訳は、やはり東北地方の産業と流通経済の発展から切り離しては考えられないであろう。
 更に地形的な理由から考えると、江戸時代の中心地で大規模な都市が発展するには、大規模な治水工事と、それに伴う技術が必要となる。現在都市が発達するのに適した条件とされている平野部というのは、治水技術、農作物の品種改良など、様々な要因が進歩しなければ有効に活用できない。
 それらの技術革新をふまえ、あえて狭義での「江戸」の地に、家康が何故城を築いたのか、その辺の考察も含まれていれば、より納得しやすい形になった気がする。

 率直に言うと、本書の内容では広義としての江戸を選んだ理由にはなっていてもあの場所に江戸城を建てた理由における考察が不足している感じる。「家康は何故本郷を選ばなかったのか?」あるいは「家康は何故豊島を選ばなかったのか?」といった疑問への解答になっていない気がする。つまり、わざわざ海に近い日比谷の低地のあの場所に城を築いたという、ある意味明確な“意志”を感じるこのポイントへの疑問がどうも私的にはぬぐえなかった。

 もっとも、そういった新たな疑問を生むきっかけになる書籍と考えると、本書は「江戸時代以前の江戸」を知る手がかりとして、なかなか面白い本だった思う。

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コメント

「家康はなぜ江戸を選んだか」の内容を覚えてる範囲で詳しく教えてもらえませんか??

申し訳ありませんが、詳しい理由については、直接本をお読みになった方がいいと思います。

政治的に京都と距離を置きたかった…みたいな話だったと思いますが、詳細については、今手元に本がないので、よくわかりません。

そうですか。
わざわざありがとうございました。

よろしくおねがいします。

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