まっかちん.Web / アラビヤン焼きそばファン倶楽部 / ESSAY / LINK / フラットな地球 / Photography. Blog*/ 記事INDEX

« 那由他、再訪問 | メイン | 宮本常一公演選集3:都市文化と農村文化 »

▼2014年02月14日

引くより押すべし

 通勤途中でよく「日野・コンテッサ・1300クーペ」を見かけます。中の運転手は作業着っぽい服装していますので、通勤中なのでしょう。こうやって日常で旧車と暮らしている姿は、実にいいなぁ…と思います。

 このコンテッサですが、エンジンが後ろにあるR/R(リアエンジン・リアドライブ)方式です。今では信じられませんけど、昔はR/R方式の自動車の方が、効率的だと言われていた時代がありました。

 自動車が単に直線(とまではいかなくても鉄道並みに緩やかなカーブなど)状のルートを加減速するだけでしたら、R/R方式は確かに有利です。何故なら、走行中重心が見かけ上後に移動しますので、後の駆動輪に荷重がかかり、良好なトラクション(対地摩擦)を得ることが出来るからです。
 現在主流になっているF/F(前輪駆動)方式は、その構造上加速時に満足なトラクション(対接地摩擦)を得ることが出来ません。何故なら、F/F方式は加速すると重心が駆動輪よりも後に移動してしまい、肝心の駆動輪にかかるトラクションが不足するからです。
 逆となる減速時についても、R/R方式は車体重心が自動車の中心方向へと移動して減速効率が上がるのと違い、F/Fは車種にもよりますが、重心が車体より前に移動してしまうことがあるため、ブレーキ抵抗が前輪に集中してしまい、あまり良好ではありません。

 その代わり、自動車におけるF/F方式は、安定した直進安定性、操舵性をもたらします。これは重心と駆動部分が前にあり、その他の部分を引っ張るからです。単に物体を動かすだけなら、後から押す方が理にかなっていますが、物体を任意の方向に誘導しながら移動させる場合は、むしろ引っ張った方がコントロールしやすくなります。
 今使われている多くの自動車は、直進的に移動するだけの乗り物ではないので、これは理にかなっているのかもしれません。

 自動車と違い、水の上を走る船の駆動方式は逆に、駆動力が後へと移動していますね。
 初期の手こぎ船はともかくとして、風の力を必要としない蒸気船は、初期のタイプでは船体左右中央横に、水車のような大きな輪がついていた外輪船が主流でした。
 しかし、その外輪はすぐに船体後ろへと移り、やがて水中に完全に没するスクリュー式となります。船の場合、エンジンは船体中央底付近に設置されることが多いので、R/Rとまではいかないかもしれませんが、駆動力は後へと移動してゆきます。

 そういえば、空を飛ぶ乗り物でもF/F・R/Rの違いがあります。
 かつてのレシプロエンジンを搭載していた戦闘機達は、ボディ前面にエンジンがあり、大雑把ではありますが、飛行機の翼が自動車でいうタイヤと考えれば、F/F方式と言えます。それに比べて、第二次大戦以降のジェット戦闘機は、概ねエンジンとその噴射口が機体後端にありますので、R/Rと言えるかもしれません。

 飛行機…特に戦闘機というと、ひらりひらりと空を旋回して自由に舞う…といった姿を想像しがちですが、実のトコロそういった空戦は、第一次世界大戦から第二次世界大戦初期で終了します。それ以降の空戦は、もちろん例外はありますが、基本は「Hit and Run(一撃離脱)」と呼ばれる戦いが主流です。ここで求められる機体特性は、旋回性能よりも、素早い加速・上昇性能だったりします。
 絶対的な旋回性能なら、自動車同様、頭にエンジンを積んだレシプロ方式の方が物理法則的に優れています。これは上記で書いた自動車と一緒ですね。しかし、それよりも、効率的により速く飛ぶことを求めて、エンジンはジェット化して機体後端に配置されるようになったのでしょう。
 そういえば、日本陸軍が大戦末期に試作した「震電」は、旋回性能を犠牲にしても、とにかく素早く襲来するB-29に立ち向かうという迎撃戦闘を想定した設計なので、より速く飛ぶためにエンジンとプロペラが後ろに配置されたR/R方式になっています。

 空を飛ぶといえば、ロケットも初期はF/F方式です。
 ロケットの父と呼ばれるゴダードのロケットも、初期のタイプは噴射口が本体上にあるという、今でいうとちょっと想像しがたい形状をしていました。これは何故かというと、ゴダードも本当はボディの後端に噴射口を設けたかったのですが、それだとロケットが直進してくれない…つまり曲がりすぎてしまうという事から、このように無茶な構造を取らざるを得なかったのです。自動車や飛行機では問題ない良好な旋回性能が、逆に徒になった例かもしれません。
 もちろん、こんな形のロケットは効率が悪すぎるため、すぐに噴出口のコントロールを工夫して、後端噴射式になります。自動車でいうR/R方式になるわけですね。

 とまぁ、色々書き連ねましたけど、世の中の乗り物は自動車以外全て、進歩の過程で、力を前から引っ張るのではなく、後から押す方式に変わってきました。
 なので、ひょっとしたら、自動車の世界も近い将来、またRR方式が主流になるのかもしれない…なんて、古きコンテッサを見て妄想したのでした。R/R方式…なんだか夢がありますね…と思うのは、自分がクルマ好きだからなのでしょうか。

 そうそう、鉄道には触れていませんでしたが、例えば今の日本で、機関車が客車を引っ張る方式の、動力集中式の列車がほぼ消えた代わりに、列車編成内の台車が駆動力を分担するという、動力分散式…要は普通に走っている電車や新幹線方式ですね…が主流になりました。
 これもF/FからR/R…とは言えないまでも、駆動力は微妙に後へ移動していますので、船・飛行機やロケットなどの乗り物と同様、R/R方式への流れと同じと言えなくもない?

Amazon.co.jpでの関連商品

コメントを投稿

最近のコメント

アーカイブ