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▼2020年02月23日

Musical Fidelity A1

P2231785 悪魔的で耽美な音を奏でながらも、そのアンプはまるで「電気ストーブ」とか「天板で目玉焼きが焼ける」等といわれ、マニアから畏怖の念を抱かれていた英国製のアンプがあります。それがこの「MusicalFidelity A1」です。

 発売は1987年、当時の国内価格は138,000円(時期による)で、本国の英国では300GBPで売られていたようです。当時のレートだと現地価格は4〜5万円、まぁ…そのクラスのハッキリいって安物のアンプでした。
 ただ、このA1が他のアンプと違っていたのは、こんな安物のくせに純A級動作のプリメインアンプだったこと。

 アンプのA級動作については以前もこのエントリでチラッと触れましたが、簡単に言うと、理想的な増幅方式ではあるのですがその非効率さから猛烈に発熱します。通常のアンプはボリウムを最大にでもしない限りそんなに熱くはなりませんが、A級のアンプは構造上常に消費電力はボリウム全開状態のため猛烈に発熱します。このA1の場合最大出力は20Wとかなり控えめですが、その代わり通電中は常に内部で20Wのヒーターを使っているような状態です。
 そんなこともあり、A1の天板は効率的な放熱を行うため細かいリブ加工がされたアルミニウム製になっていますが、それでも電源を投入してしばらくすると、天板は本当に火傷するくらい熱くなります。ある意味こんな危険なアンプは国産メーカーだと販売が許されないレベルだと思いますが、まぁ…良くも悪くも海外製品らしい個性ともいえるかな。

 そして、その音はさすがに純A級らしく、滑らかで濃厚であり、Hi-fiともまた違う気もするのですが、クセになると抜け出せない。とにかく音楽を聴くのが止められない…そんな魔力すら感じる不思議な音。
 自分も実際手にしてみて、鳴らし始めは「悪くはないけどたいしたこともないかな」なんて思ってはいましたが、何というか、しばらく聴いていると、このアンプの奏でる音の重力から抜け出せなくなります(ちなみにこちらのサイトでは、A1の出力が8Wを超えた場合、AB級に切替わるのでは?という疑問を呈しています)

 このエントリを書いている時点では、別荘でDitton15と共に鳴らしているのですが、金曜日の夜から今日のこの時間まで、寝ている時以外は本当にずっと音を出しっぱなしです。こういう状態も珍しい…なんだかんだ、別荘で音楽漬けとはいえ、部屋にいる時間の半分程度しか音は出していなかったりするのですが、なんというか辞められないですね〜気持ちよくて。

 具体的に音の傾向を書くと、正直レンジは上にも下にもそんなに伸びていないと思います。安物アンプらしい中域に固まりがある音ではあるのですが、その中域が素晴らしい。どの音も、解像度とかメリハリとか…そういう評価軸とも違います。何というかとても滑らかで心地よい音を奏でる。自然な音…クセのない音ともまた違い、クセはあると思うのですが、聴感上とても自然に聞こえるんですよね。なのでずっと音楽を聴いていられる。

 ただこのA1は、上記のように危なげな構造のためか、とても壊れやすくトラブルが多いアンプとしても知られています。今では中古でまともに動く個体を見つけるのもなかなか難しいみたい。
 そもそも動作時における天板の温度が設計値で65℃、実測値では更に上がるのに、中で使われているコンデンサが耐熱85℃とか狂った設計らしく、そこはアンプ界の鬼才ディム・デ・パラヴィッチーニ(このアンプの設計者です)、この耐熱の部品を敢えて選択した理由があるのでしょう…まぁ、当然コストの都合だと思いますけど。
 こういうアンプなので、既に40年以上前の格安アンプの割に中古相場は高目です。未整備品でおおよそ5万円〜、保証付きで完全性備品だと10万円前後なんてのもあります。すぐにぶっ壊れるけどハマると抜けられない…まるで古い英国車みたいなアンプですね。

 私が今回手に入れたのは、何故か未整備品相場よりかなり安い個体で、サイドパネルにメッシュ加工がされていない初期型です。
 というかそういう値段じゃないと手は出さなかったと思うのですが、家に持ちかえってまずはSP出力からのDC漏れ測定後(測定値は忘れたけど全然問題なかった)、メインシステムに繋いで聞いてみると、どうもRチャンネル側の調子が悪い。どうやらリアパネルのRCA端子が接触不良を起こしているようで、適当にいじると直ったのでそのまま聴いていたのですが、数日後完全にRチャンネルが死にました。だから安かったのかな?

 まぁ…故障箇所は判明しているので、バラして基板を取り外し、該当箇所の裏側からはんだをやり直しました。ついでに放熱グリスも塗り直して、手をベトベトにしながら再度組み立てたのですが、このアンプの組み立てには結構コツが必要で、うまく組み立てないと変なところですき間が空いたり、前面の飾り版も仮組みで確かめながら組まないと、ボリウムやセレクタが動かなくなってしまいます。値段が安い割に製造効率すごく悪そうで、一昔前の海外製品って匂いがプンプンしますね。
 それとバラしてみるとどのパーツも恐ろしく安っぽい。セレクタスイッチなんてこんな構造で大丈夫なのか?なんて気もしますし、ボリウムも秋月で売ってるラジオの組み立てキットかよ?なんて代物。トラブルが起きてたリアのRCA端子も実に安っぽいパーツを直接基板にはんだ付けしていて、構造上また接触不良を起こしそう。それなのになんでこんなんでこんなに音がいいのか?
 ただトランスだけはいいの使ってる気がしました。そもそもこのクラスでトロイダルとか昔の日本製アンプではあり得ませんでしたし。

 修理後はものすごく調子よくなりました。修理前の何となく定位がふらつく症状も、そもそもこのA1とはこういうモノなんだと思っていましたが、単なる接触不良だったのね。まぁ…この発熱ですからはんだ自体も劣化しやすいのでしょう。
 それとバラしてみて嬉しい誤算でしたが、なんとこのA1、リキャップを受けていて、コンデンサが全てピカピカの新品状態でした。これすごくラッキーだったんじゃない?

 とりあえず今はファンで天板を冷却しながら使っていますので、内部もそんなに熱くはなっていません。あまり神経質になる必要もないのかもしれませんが、冷やさないよりは冷やしながら使った方がいいはずなので。

 このA1、入手しても色々面倒そうだしトラブルも多そうだし、今ではあまりお勧めできるモノでもないのですが、それなりに覚悟を決めた方とか、あるいは何があっても後悔しない値段とか(今回の自分だな)、そういうケースがあれば是非入手してみて下さい。
 音はたしかに素晴らしい!当時も言われていましたが、音楽をずっと聴いていたい人にとっては本当によいアンプだと思います。

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