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▼2006年05月23日

デザイナーとディレクター

 今でこそ「ディレクター」とか名乗っているが、私はれっきとしたデザイナー上がりである。チラシやリーフレット、カタログ、書籍、電飾看板、その他諸々…立体物や映像を除くが、おそらくデザイナーと呼ばれる人達が関わるであろうジャンルは一通り経験してきている。勿論、かつては名刺に「デザイナー」と肩書きが入っていた。それでも私は自ら口頭で「デザイナーです」とは、極力名乗らないようにしてきた。何故なら私がやっていた仕事は、本来の意味での“デザイン”ではないからだ。

 英語の辞書で【Desigin】と引くと、実はデザインという言葉にはもっと大きな意味がある事が分かる。つまり、仕事で言う所のデザインとは、あるモノを企画しアイディアを練ってそれを形にして最後は製品になって納品するまでの行程をトータルで管理、創造することなのだ。つまり、私を含め私の回りで働いているデザイナー達がやっている仕事は、フィニッシュ、仕上げ、図案、コーティング、スタイリング、そういった作業であって、実はデザインをやっている訳ではない。
 よくデザイナー連中から「日本のデザイナーは海外に比べて待遇が悪い」とか聞くが、そりゃそうだ。だって私達がやっている仕事は、本来の意味である“デザイン”ではないのだから。
 
 では、日本語で本来の「デザイナー」を表す言葉はなんなんだろうか?と考えてみると、残念ながら近い職種はあっても、ぴったりと該当する言葉は無いのではないかと思う。ディレクター、プランナー、その他諸々、みんな意味が違う。そう、日本のビジネススタイルにおいて「デザイナー」と呼ばれる肩書きの職種は存在しない。

 立体物で考えるともっと分かりやすいと思う。例えば私が今文字を打ち込んでいるノートパソコンについて考えてみると、いわゆる外装の色や形、キーボードの書体など、そういった項目を考える人達はデザイナーであるとは言えない。例えばかつてAppleがPowerBookを企画したときのように、従来手前にあったキーボードを筐体奥に移動して手前をパームレストにして、その真ん中にトラックボールを配置する。そういった機能を実現するために、新しいテクノロジーの情報収集、そして基盤設計など、商品そのものの姿を企画立案、そして実現するのがデザイナーと呼ばれる人達だと考える。そういった機能を作り出した後、色やディテールなどの外装を考えるのは些細な問題でしかない。

 そんなこともあり、私は自分自身を「デザイナー」であると名乗る事に抵抗を感じていた。だから、慣習上必要なとき以外は自らを「デザイナーである」と言ったことは非常に少ないはず。逆に現在のように「ディレクター」を名乗るのは、そんなに抵抗がない。何故なら所詮ディレクターなどという身分の人間は、人にこき使われるだけの身であるから。少なくとも本来の「デザイナー」という職業のように孤高の存在ではない。

 別にあなたたちがデザイナーと名乗ることに反対する訳ではない。これは所詮私が勝手に考えている事で、正しい意見だと言うつもりもない。ただ、世の中で「デザイナー」と呼ばれる職業に就いている人達は、一度くらいは本来の意味でのdesignという言葉の意味をじっくりと考えてみて、出来る範囲でいいから、自分の仕事を少しでも変えていってほしいと思う。

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