まっかちん.Web / アラビヤン焼きそばファン倶楽部 / ESSAY / LINK / フラットな地球 / Photography. Blog*/ 記事INDEX

« ドッグファイトの科学/赤塚聡 | メイン | ネットワーク分離装置HIT-100は音をゆったりとさせた »

▼2012年12月11日

LINN ITTOK LV IIとIKEDA 9cIII

EC110577.JPG ちょっと前にLINNのBASIKというアナログプレーヤーを入手して、久しぶりにレコード三昧の毎日を送ってるのですが、この度更なる新兵器を入手。
 伊藤さんが作ったアームだからITTOK!ということでITTOK LV IIというトーンアームです。

 まずはバイヤーズガイド的な情報から。
 入手先はヤフオクで、落札金額は6万円台…ま、相場通りでしょうか。アーム単体の出品は少ないので、あまり相場感がないのですが、数年前では10万弱くらいでいくつか落ちていましたので、今回の価格なら、そんなモノかなと。

 ITTOKですが、ここの所海外のオークションでは、大体500ドル台で出品されているケースが多いようです。でも最終落札額まではわかりません。1ドル80円だと約4万円〜なので、500ドル強なら安い!と思ってしまいますが、国際小包の送料が数十ドルに加え、トーンアームは部品扱いになりますので、別途関税がかかります(通関処理の都合でかからない場合もありますが、基本的にパーツの輸入には関税が必要です)。もちろん消費税も…と考えると、最終的には600ドル+位になるかもしれません。海外から落札するときはこの辺の追加予算もお忘れなく。あとebayでは、何故かしばらく前から、ITTOKの改造品がよく出品されているようなので、ご注意下さい。

 最近はあまり熱心に見ていなかったのですが、ITTOKのLV IIとLV IIIでの相場は、あまり変わらないようです。というか、さほど出品も多くないので、落札金額は相場よりも、たまたま欲しい人が重なると上がるといった感じ。ただ、海外ではEKOSの出品もコンスタントにあり、初期型だと900〜1000ドルが開始価格みたいな感じなので、ITTOKだと、どんなに競っても700ドル迄じゃないでしょうかね。

 さてこのITTOKですが、最大の特色は、ダイナミックバランス型のアームだということ。
 アナログプレーヤーは、その先端に装着されたカートリッジにある針でレコードを読み取る訳ですが、アームはその針圧のかけ方によって、主に2種類の方式が存在します。

 ひとつは「スタティックバランス型」と呼ばれるモノで、これは天秤と同じ構造です。支点を中心に左右同じ傾きになるようアームのバランスを取り、そこから“おもり”を使って針圧を得ます。実際はおもりを載せるのではなく、アームの後ろにあるバランスウェイトをスライドさせ、支点をずらすことで指定針圧を得ます。現在発売されているアナログプレーヤーのアームは、殆どがこの形式です。

 そしてもうひとつが「ダイナミックバランス型」と呼ばれる方式。こちらもスタティックバランス型と同様、支点を中心に左右が同じ重さになるようバランスを取るのですが、その後の針圧のかけ方が“おもり”ではなく、スプリングなどを用いて機械的に荷重をかけます。そのため、原理的にはアームが天地逆さまになっていても、カートリッジには指定の針圧がかかる事になります。

 どちらの方式が優れているのか、アナログ全盛期には色々と論争が起きたのですが、現在では構造の単純さから、スタティックバランス方式が主流となっています。しかし、LINNのEKOSを始め、高級トーンアームの世界では、今でもダイナミックバランス型のアームは健在です。

 ダイナミックバランス型アームの利点は、その安定したトレース能力にあります。音溝の状態や、歪んでしまった盤面に対しても、常に動的に一定の針圧をかけられるのが特徴。逆にスタティックバランス型の利点は、その単純な構造故に、徹底的に工作精度を追求できるという点にあります。
 それぞれの方式に優劣はなく、使用するターンテーブルやカートリッジ、また、環境によって再生音の質は変わってきます。ただ、現在ではダイナミックバランス型のアームが、その構造の複雑さから、おおよそ高価である、というだけです。

 では、私が何故、BASIKに付属していたAKITO IIというトーンアームを持っているのに、今回あえて古い時代のアームをもう1本手に入れたかというと、機器のアップグレード目的というより、以前から所持しているIKEDA 9cIIIというカートリッジを使いたかった!のが理由なのです。

 このカートリッジは極めてユニークな構造となっており、一般的なカートリッジにあるカンチレバーが存在しません。カンチレバーとは、おそらく皆さんが「カートリッジの針」と聞いて真っ先に想像する、本体から斜め前に突き出している棒のことです。その棒の先をルーペで見ると、小さな“トゲ”のようなモノが見えますが、それがダイヤモンドでできた、本来のアナログプレーヤーの針となります。
 そして、IKEDAのカートリッジは、その針が直接コイル…つまり発電機本体に取り付けられています。それらについて詳しくは、過去のページ「カートリッジを磨こう!」を参照して頂けるとわかりやすいと思いますが(イラッとする文章ですが若気の至りということでw)、とにかく見た目的にも構造的にも危なげなカートリッジです。

 で、このカートリッジは、ダイナミックバランス型のアームを使わないと、性能を発揮できないのです。
 IKEDAのカートリッジは、カンチレバーというある種「緩衝材」がないおかげで、音溝のトレースに関する動作は全てアーム側で引き受けることになります。その為、盤面の状態やセッティング、そして音溝の変化に敏感です。また、盤面の状態はもちろん、音溝の状態によっても、簡単にカートリッジがホップしてしまい、それは音の歪みとなって現れます。そのため、針先には常に動的な仕組みで加重をかけ続ける必要があり、使うにはダイナミックバランス型のアームが必須となっています。

 以前、このカートリッジをスタティックバランス型のLINN BASIK PLUSというアームで使ったことがあるのですが、音が歪みっぽくなり使い切れない代物でした。IKEDAの場合は、特に型番が進化する程機材の選定がシビアとなり、初代IKEDA 9では、まだスタティックバランス型アームでもなんとか音になったのですが、IIIになるともうダメになりました。

 では、どうしてこんなにめんどくさいカートリッジが売られているのかというと、それはもう単純に「音がいいから」です。
 コイルとダイレクトに接続された針先の音は、ちょっと他のカートリッジでは聴けない種類の音を奏でます。この方式が最上であるとはいいませんが、一度ハマると抜け出せない音であることは間違いありません。
 で、私もこのITTOKをつかって、ようやくIKEDA 9cIII本来の性能を発揮させる事ができそうなのです。

 長くなりましたが、これが今回、私がITTOKを手に入れた理由となります。音質的な感想等は、また後日、別エントリで。

OLYMPYS E-3 + Zuiko Digital 50mm F2.0 Macro

« ドッグファイトの科学/赤塚聡 | メイン | ネットワーク分離装置HIT-100は音をゆったりとさせた »

コメント

父親のアームを楽しんでいただきありがとうございます。

お!ご一族でしょうか。
おかげ様で楽しんでいます、素晴らしいアームを作って頂き、ありがとうございました!

ありがとうございます。三男です。

自分も今Ittok Titaniumのプロトタイプに池田さんのカートリッジを付けてるのですが、お書きになったような特性だったのですね。今はご本人もなくなってしまい、このような説明は実はご本人から受けなかったのでした。

自分的にはArkivの方がよかったのですが、お預けしている間にこのカートリッジになっていました。

コメントありがとうございます。

ご親族の方と同じ構成とはちょっと嬉しい気がします。
IKEDAについては、本来はもっと重量級のアームとの使用を想定しているらしいのですが、自分はITTOKで問題ないと感じています。

最近は、LINNのASAKも入手しまして、そちらととっかえひっかえ聴いている状態です。

コメントを投稿

最近のコメント

アーカイブ