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▼2014年03月09日

百姓たちの水資源戦争/渡辺尚志

R0320677.JPG 日本史の素晴らしい所は、プロ、アマを問わず、このように様々な視点から新たな資料を探し出し、どんどんと新たな解釈、事実が追加されてゆくことだと思います。
 なので、10年前に書かれた江戸の歴史本など、大筋で大きく変わっている所はさすがに殆どないとしても、細かい解釈の違いは結構あったりします。

 そして、この渡辺尚志氏は、古民家から発見された古文書などを丹念に調べ上げて、従来の「武士階級から虐げられる一方の百姓」というステレオタイプの歴史感とはまた違った、新たな発見を何冊も本にまとめておられます。今回の新刊もそのひとつ。こちらではそのなかの「水利権」について調べられています。

 第一章は、江戸時代当時の水利権についての考え方、そして第二章がまた面白いのですが、大阪の大和川流域、藤井寺市周辺に残された古文書を元に、実例として水資源に関する様々な争い、裁判などをまとめています。

 色々面白い例があるのですが、その中で特に興味深かった点をざっくりと大筋だけまとめますと、例えば、江戸時代に争われた水に関する争いは、おおよそ「慣例主義」というか、昔はどうだったか…という視点に基づき判決が下されていたのですが、そちらが明治維新を迎え、西欧から「個人所有」という概念が入ってくるにつれ、判決もまた変化し始めます。
 つまり、従来は川を流れてくる「水」あるいは「水源」は、それに関わる共同体皆の財産であったという意識が、西欧的法律解釈の流入により、ここのため池の所有者は誰、そしてこの水源の所有者は誰であるというように、水という資源に対して「所有」が行われるようになった事。
 そして、その結果従来は慣例主義であった水資源に関する争いも、徐々に所有者の意向が有利になり始めた…ということらしいです。

 従来…というか、今でもそうですが、江戸時代から続く日本の農村の暮らしぶりが大幅に変化したのは、明治維新ではなく、戦後高度経済成長期と言われています。
 しかし、単純に目に見える「モノ」以外で、こういった精神構造の変化も、農村の変化を語る上で見逃せないと書かれており、成る程…と思いました。

 文章も平易で、普段こういった歴史関係の本を読んでいない人でも読みやすく、それでいて「自分達の意志」で自治に励んでいた江戸時代の農民像が、判りやすく学べると思います。
 学校で「江戸時代の農民は全国何処でも搾取される一方だった」と習ったままの人は、一度このような最新の歴史観が書かれた本を読んで、アタマをリセットしてみるのもイイかも。

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