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▼2015年02月01日

ラノベとの境界の彼方

 昨日に引き続き、本の話。

 別な人と本について話していたんだけど「ラノベとか読んだことないんですよね」という話になり、そういえば「ラノベと普通の小説の違いってなに?」みたいな話に。

 違いと言えば…表紙にいかにもアレな絵が入っていたり、そんな所かな?としか結論は出なかったけど、実際問題ラノベと純文学なんて、書いている人(あるいは売る編集者)が「これはラノベ」と言えばラノベだし「純文学」といえば純文学だろう。自分もラノベとかあまり読まないが、そんな程度の差でしかない。
 また、最近ではいわゆる「ラノベ文庫」なレーベル以外で、各出版社がラノベ的にアニメ絵を表紙や挿絵に使った小説も沢山出てきて、ますます違いがわかりにくくなっている。

 ジャンルから想像する内容でラノベと言えば、ラノベの内容は荒唐無稽な話が多いし、萌えばかりだし、そもそも設定に無理がある…なんて考察もあるかもしれないが、それを言ってしまえば普通の小説だって荒唐無稽な話は多い。

 例えば私が比較的好きな川上弘美の作品では、ある話では主人公がヘビになったり、別な話では幽霊になって多数の女とヤりまくったりと、ラノベ真っ青なご都合設定とも言える作品があったりするが、彼女の作品は「ラノベ」にはカテゴライズされない。
 また、もうちょっと古い小説になると、川端康成の作品なんて、いい歳したおっさんが赤ちゃんプレイしたり、旅の途中で出会った14歳ロリ少女の後を付け、風呂場を覗き見したり(しかもその少女は全裸で立ち上がって主人公に手を振るなんてオマケ付き)、こちらもまぁ…萌えという視点ではラノベには決して負けていない(笑)

 思えばこの手の「若者向け大衆小説」というのは、いつだって今でいうところの「ラノベ」的扱いをされてきた。例えば、江戸時代の東海道中膝栗毛などは、いわゆる「滑稽本」とされて、ちゃんとした本という扱いではなかった。
 江戸時代当時のいわゆる「ちゃんとした本」というのは、私達が普段口にしている口語体とは全く異なり、例えば「也」などという言葉は、当時の本で多用されていたからといって、普通の人が「也」とか喋っていたわけではない。
 これらの本で、初めて口語体による記述で書かれたものは、ホントかどうかわからないが、勝海舟のオヤジである勝小吉による夢酔独言とも言われ、当時としては画期的な手法であったが、まともな本として扱われなかったようである。

 その後、皆さんご存じの夏目漱石が、私達が普段口にする言葉ととても近い言葉で小説を書き始め、やがてそれらはベストセラーとなってゆくが、彼の小説だって出版当時は「言葉が乱れている」とか結構さんざんな評判だった。だが、結局それらの読みやすい文章は、若者を中心に支持を得て、やがて漢文を知らずとも誰でも読むことができる大衆小説として受け入れられてゆく。

 その後、大正デモクラシー時代や、戦中などの世相で小説は随分様変わりしてゆくのだが、やはり若者向けの小説は、恋愛もの…特にしがない青年がふと出会った美少女と恋に落ちて…みたいな話が多く、あまり高尚な扱いはされなかったようだ。

 戦後はミステリ小説ブーム、更にSFブームなどがあったが、それらの小説が主流になる頃から、戦前・戦中のご都合主義的恋愛小説が「純文学」などと呼ばれるようになり、どことなく一段上の扱いをされるようになった。

 そして、そのようなSFブームの中、現在のラノベに通じる直接の源流扱いとされる作家が生まれる。それが皆さんご存じの「新井素子」だろう。彼女の文体は、いわゆる漫画的擬音をそのまま文字にしてしまった事が特徴。「はふっ!」とか、既にマンガ文化に触れた読者でないと何を言ってるのかわからなかったと思う。
 そしてその頃多くの少女(少年)達を虜にしたコバルト文庫、朝日ソノラマ文庫などを経て、角川や電撃など、ラノベ全盛の現代につながってきたのだ。

 そう考えると、古くから本を読んでいた人達は、いつの時代も新しい表現で書かれた小説を、多少小馬鹿にする伝統が常に受け継がれていると言える。
 自分の記憶にあるところだと、今でこそ新井素子とか読んでも低俗扱いされないが、昔はヘビーなSFファン達から「マンガ以下、低俗すぎる、SFをなんだと思っているのか」などの批判も多かった。そしてそれらの批判は、現代オッサンやオバサン達が「今の若い子はラノベとか漫画みたいな小説ばかり読んで…」みたいに考えている心境に近いのではないかと思う。

 つことで、今ラノベを沢山読んでいる人達も、あと数十年すれば、今のラノベは少しだけ高尚なジャンルになるかもしれないので、あまりラノベとかなんだとか気にせず、好きな小説を読んでいればそれでいいのではないでしょうか?という、特に結論もないお話でした。

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