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▼2018年05月01日

TRIO KA-800

P4300231 毎度無駄遣いをしています。最近ではとにかくアンプが楽しくて、色々と聴いてみたい欲求がうずうずしているので仕方がない。

 今回のお題はTRIO KA-800。毎度お馴染み鹿嶋に行く途中の千葉県内のドフで、ジャンク棚に並んでいるのを発見。メモで「音出しOK」と書いてあったし、値段も「壊れててもいっか」と思えるほど安かったので、一応レジで通電させてもらい、SP端子にテスター当ててみるとDC電圧は100mvをちょっと越える程度だったので、なんとかなるかな?と思って購入。トリオのこのシリーズのアンプは、例えジャンクでなくても前面パネルがないとかふたがちゃんと閉まらないとか色々あったりしますが、この個体は奇跡(?)的に前面パネルも問題ないし、全体がとてもキレイでした。

 トリオのこの時代のアンプといえば、バシュタールの惨劇でお馴染みのシズマドライブ…じゃなかった、シグマドライブです。技術的な点については私の怪しげな知識で説明するよりググって頂いた方が確実ですが、簡単に説明しますと「アンプのNFB(ネガティブフィードバック)回路をスピーカーユニットにまで拡大した」という技術です。
 アンプからスピーカーに送り出される信号は、スピーカーが駆動することによって逆に発生する信号により歪められます。そのためスピーカーから逆起歪をコントロールするための配線をもう一組引いて、そのフィードバックから得られた歪みを補正して正しいスピーカーに送り出す…なにやら禅問答みたいな解説になりましたが、通常はアンプの中身で行っているNFB回路をスピーカーユニットも含めた1つの回路として補正するという技術。
 当時のトリオ、名前が変わったケンウッド初期のアンプにはこのシグマドライブを搭載した機種が多く、アンプの後ろを見ると通常のSP±接続端子の他に、端子の回りが斜線で囲まれたシグマ用の接続端子があったものでした。

 メーカーではこのシグマドライブ搭載アンプにはシグマ専用スピーカーケーブルを同梱していたりしたものですが、専用ケーブルでなくても、普通のSPケーブルを2組用意すれば問題なく使えます。
 スピーカー側には二組のケーブルをパラレルで接続してアンプ側は通常のSP端子とシグマ用端子に分けて接続、シグマ側のケーブルについてはメインのSPケーブルとは違う簡易的なケーブルでも問題ないそうです。私も実物を見たことがないのですが、メーカー純正のシグマドライブ用ケーブルも、シグマ側はやや細かったようなので、敢えてメインのスピーカーケーブルより少し細目のケーブルを選ぶのもチューニングなのかもしれません。

P4300229 鹿嶋に持ち込んで早速動作チェック。まずはふたを開けて軽くエアダスターでホコリを飛ばしますが、内部にはほとんどホコリの付着がありませんでした。
 とりあえずしばらく通電してからアイドル電流を調整します。規定値は51mVだそうですが、調整しても30mV弱にしかならなかったので、とりあえずその辺りで左右電圧を揃えます。その後はスピーカー端子のオフセット電圧調整。
 調整はどうやらシグマを含んだSP端子Aではなく、シグマがないB端子で行うようで、オフセット調整後に計測すると左右80mV程度あった電圧を、保護回路をカチカチ言わせながらもなんとか20mV程度にまで下げました。その後ふたを閉めてしばらく音出ししていると、右側だけ50mV程度に上がりましたが、そこで止まったので由としましょう。パーツ交換を含めたメンテナンスでも行わない限りこの手の調整はなかなか規定通りにならないものですし、SP端子のDC電圧もおよそ100mV以下でしたら特に問題はありません。ただ、マイナス側に振れると良くないようですね。
 ちなみにアンプのオフセット調整のつまみはかなりシビアな上に、この手の中古品では大体は右に回そうが左に回そうがあまり法則性もなくガツンと電圧が上がったり下がったりします(この状態でスピーカーつないでたら壊すので注意)。電源オフの状態で適当につまみをぐりぐり回してガリを取ってから一度元の位置に戻して、通電後はドライバーでちょいと触るくらいの感覚でやるのがコツ。それでも電圧はコロコロ上下しますので、ある程度下がったら様子を見て安定したところで妥協するしかありません。メンテもされていない古いアンプのDC電圧なんてどうせそんなに下がりません。
 繰り返しになりますが、規定値ピッタリ(0Vなど)にしたければパーツ交換を含めたメンテを行わない限り無理。私のような素人ではここまでが精一杯ですね。それと感電には注意してね。緊張して基盤に汗とか垂らさないように。

 ちょっと話が横道に逸れましたが、調整後にテスト用スピーカーをつないでしばらく通電+音出し。問題なさそうなのでYAMAHA NS-1cにまずは普通に接続、音色に問題なさそうなことを確認してからシグマ接続してみました。

 音の印象としては、調整しながらぐぐって見つけた瀬川冬樹氏によるテスト記事の印象そのもの。普通の接続では普通の音(悪くはなかった)でしたが、シグマ接続だととても面白い音になりました。記事にもある“打音の衝撃的な切れこみ、パワー感”はとても個性を感じて気持ちが良いです。アコースティックな楽器、ピアノなどではやや硬質な印象ですが、こういうモノかな?って気もします。

 このKA-800、筐体はプラ製で薄く、軽く、とても安っぽい見た目なのですが、これでも定価は64,800円もした訳で、当時から重量級であったサンスイのAU-607と同じ価格帯で売られていました。もちろんKA-800の安っぽい筐体には理由があり、ボディに磁性体の採用を極力排除したそうです。そのため天板こそ金属ですが、その他は底面も含めてプラ製です。まるでミニコンポのパーツみたい。

 シグマドライブの効能ですが、ちょっとしたトラブルというかミスからその効果を確認することができました。というのも、スピーカーに接続した際右側のシグマ側だけきちんとSP端子に固定されていなかったようで、音を聴いているとたまにバランスというかF特が変化します。初めはラウドネススイッチや、バス・トレブルのつまみが接触不良でも起こしているのかと思ってぐりぐりつまみを動かしたりしましたが、右側だけやはり音が不安定なので、念のためスピーカー裏のSPケーブルを確認してみると、右側のシグマ側のケーブルが端子にうまくはまっていなくて、配線が浮いたように不安定になっていたという始末。あらま?と思って再接続、すると安定した音になりましたので、やはりちゃんとネガティブフィードバックして信号を変えてるんだなとちょっと感心。

 改めて確認すると、全ての端子でガリも何もなく、スライダ式のプリセットボリウムと、メインのボリウムボタンもちゃんと生きています。ボリウムボタンの電球だけは切れていましたが、ここは交換するか…あるいはちゃんと動いているので放置でもいいかな?あの大きなボタンが常時発光していると、ちょっと視覚的にうるさそうです。

 ちなみに「メインのボリウムボタン」という言い方をしましたが、このアンプのボリウムはちょっと変わっていて、スライダー式のレバーで音量を調整できるのですが、その横のボリウムボタンを押すとすぐにミュート状態になります。その後またボリウムボタン押したり、または1度電源を切っても電源投入後にこのボリウムボタンを押すと、あらかじめセットしてあった位置まで自動的にボリウムが上がるという仕組みです。スライダーの位置は動きません。このレバーは本体に「プリセットレベル」と英文で表記されています。
 このスライダーですが、内部では紐とプーリーでメインボリウムの位置を動かしているようで、頻繁に動かしているとそのうち切れそうな気がします。そうなるとプーリー外して紐を掛け替えてと…意外と直すの面倒くさそう。なるべく音量は固定のまま使った方がいいのかもしれません。

 私は長い間海外製のアンプを使い続けていたせいで、どうしても国産のアンプは「無個性・目方でモノ売ってる」みたいな意識をずっと持っていたのですが、最近ではこうやって古いB級アンプを適当に使ってみると、昔の国産オーディオも色々がんばっていて個性があったんだな〜と思い直しています。

 それと、スピーカーやソース機器をとっかえひっかえすると訳がわからなくなってきますが、それらを固定して、こうやって色々なアンプで遊んでいると、本当に色々な音があって楽しい。今まで聴いた曲もまた違った視点を発見できたりしてとても面白いです。

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