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▼2018年06月17日

クワトロ・ラガッツィ

https://farm2.staticflickr.com/1723/28955387828_aa35187a5a_m.jpg 時に「損した!」と思う本があります。

 ひとつは、文字通り「買って損した」というつまらない本。もうひとつは「早く読まなくて損した!」という本。本書はその「早く読まなくて〜」という本でした。

 天正遣欧少年使節団、おそらく歴史に興味がある方ならこの名前を聞いたことがあるでしょう。1590年(天正18年)に日本から欧州に派遣された4人のキリスト教使節団です。

 私もかつて、天正遣欧少年使節団に関する本を読んだことがあるのですが、当時日本に訪れていたキリスト教宣教師が、日本におけるキリスト教の布教を報告するために、日本人を欧州へ派遣した…という程度の認識しかありませんでした。ただ、その使節団も、欧州側からの視点から見ると全く違ったものとなります。本書はその少年使節団を、主に欧州側からの資料を基に解き明かそうとする試みとなります。

 この天正遣欧少年使節団ですが、私たち日本人の認識としては、せいぜい…

 ・当時の宣教師達がキリスト教に改宗した日本人少年4人を欧州に派遣した。
 ・彼等がヨーロッパから帰ってきた頃の日本はキリスト教が迫害されていて、彼等の帰国後は過酷な運命だった。

 という程度ではないかと。
 つまり、上記には何となくですが「欧州から来たキリスト教宣教師が日本人を欧州に派遣した」という、日本側からの視点しかありません。
 では、何故彼等が欧州へ派遣されることになったのか?案外その疑問に答える資料は、日本側からはあまりありませんでした。それを本書の著者である若桑みどり氏は、天正遣欧少年使節について、欧州側からの資料を元に解き明かそうとします。

 後のキリスト教徒迫害の歴史を知っている私たち日本人からするとちょっと意外ではありますが、当時の日本、織田信長の治世下であった日本は、世界的に見てもキリスト教の布教が大成功した地域であり、当時は九州総人口の訳2割がキリスト教に改宗したといわれています。
 また、逆に当時の欧州のキリスト教では、カトリックとプロテスタントという2つの宗派が、互いに信者数を増やすために争っていて、そんな中、東洋の果てからはるばるローマを訪れた日本人少年4人は、キリスト教でいう「東方三賢者」に例えられ(メルキオール、バルタザール、カスパールといえばアニヲタの方ならよくご存じかと)、当時のローマ教皇からは熱烈な歓迎を受けたそうでした。あれ?少年使節は4人ではないの?と思った方は、是非本書をお読み下さい。

 私は文庫版の上下巻を読んだのですが、本書の上巻はまさに、そういった日本でさしたる歴史上の役割を演じたともいわれてこなかった天正遣欧少年使節について、欧州では如何に期待された大事件であったかを知ることができる驚きの章でした。但し下巻の方はちょっと評価が分かれます。

 本書の中で、男性が書いてきた歴史書についての批判が数カ所ありましたのであえて書きますけど、逆に女性が書いた歴史書の多くには、全てとはいいませんが一定のパターンがあります。それはヒエラルキーが厳密に決められていること。つまり彼女らが書く世界の中では、絶対的に正しい価値観とそれ以外がはっきり分かれていること。
 これは塩野七生氏が書くローマ人の物語などでも同様ですね。あの本の中のローマ人は、超絶超人の絶対的な存在で、彼等の価値観こそが正しく、彼等こそがまさに文明を作ってきた、そういう単純な世界認識です。

 もっとも、その手法が悪い訳ではありません。その世界におけるローマ人の価値を絶対的なものとして設定したお陰で、ローマ人の物語は読み物として大変読みやすくわかりやすい。あれを歴史書と言われるとちょっと疑問ではありますが、ローマ史を知るきっかけとしてはとても良い書籍だと思います。

 そのような本を、私の友達は「少女漫画」と称していたのですが、このクワトロ・ラガッツィもそんな世界観で読み解くとわかりやすい。
 著者の若桑みどり氏にとって、絶対的な価値はヨーロッパ・カトリックのキリスト教にあり、それを迫害した豊臣秀吉、そしてその後の徳川治世は悪であるという、単純でわかりやすい世界観の元に本書は描かれています。

 故に「当時のポルトガル・スペインにとって日本を武力制圧する意思は全くなかった」とか「徳川時代は日本が世界に対して目を塞いだ暗黒の時代」のようなステレオタイプな描き方をするのですが、わかって読む分には、本書では世界観と価値観が統一されているので、実にわかりやすく読み進めることができます。うん…徳川家康許せないよね(笑)

 それはともかくとして、私たち日本人が何となく思っている「天正遣欧少年使節団」についての歴史的意義を、別な視点から再確認できるきっかけとして、本書はとても素晴らしいと思います。
 単行本は分厚くて読むのイヤになるボリウムですし、文庫本も上下巻でそれぞれびっしりと500ページ以上ある大作ではありますが、冒頭の展開に心つかまれた人なら、一気に読み進めてしまうだけのパワーがこの本にはありました。

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